年に一度の原点の場所。そして将来の青写真について。

 先週末、わたしの出身大学(国立電気通信大学)の学祭(調布祭)がありました。私は大学の時にSF&ファンタジー小説系サークルに入っていたのですが、年に一度、学祭の最終日に、現役+参加可能な限りのOB・OG(以下OBと総称する)が集まることになっています。そんなわけで1年ぶりに私はOBとして調布を訪れたのでした。
 SF&ファンタジー小説サークルということで、要するに創作仲間ですね。もっとも、私はサークルに在籍はしていたとはいえ、機会が充分にあったのにもかかわらず、その肝心の小説書きはあまりやってはいませんでした。理由はいくつかありまして、まずサークル外の、クラスの友人とTRPG等で遊ぶ機会が多かった事と、大学時代はMTGに明け暮れたこと、そして私が美少女ソフトを遊ぶ事にとっぷり浸かっていたこと、教職を取ったりと学業に多少力を入れていたこと(余分に単位取りまくってましたし)、あとはゲーム製作をしていたり、ホームページ作成に費やしていた、その他同人活動を行っていたなどなど。ホームページというのは勿論、鷹月ぐみな情報局1号館および2号館の事です。
 TRPGのマスターとしてのシナリオ作成、ゲーム製作、ホームページ活動は充分に創作活動ではあったから、創作活動は4年間を通して充分行ってはいたのですが、小説そのものについてはみすみすレベルアップの機会を逃したわけで、今になって思えば勿体無い事をしたな、と思っています。
 ともあれ、毎年欠かさず出席しているこのサークル総会、ここは私の原点の一つなのです。
 原点とまで書く理由はいくつかあるわけですが、場そのものをあげておきましょう。過去には自分は現役として参加していました。この日に来られたOBの人たちには、あまり話す事はなかったけれども特別な敬意を抱いていたものです。創作者としての心を持ちつつ就職された人たち! 多くは一般の会社勤務ではあるわけですが、中にはならではの職場に勤務された方も居る。
 そして今では、気が付けば、私が卒業して4年も5年にもなるOBの立場で参加しているわけです。視線の先に見ていた存在に、自分の立場が移ってしまった。卒業後1年や2年目の時は、「あー、OBになっちゃったんだなあ」程度でしたが、今はもう、現役学生とは距離的にだいぶ離れてしまったのを自覚しています。この距離とはすなわち時間です。
 時が過ぎれば当然そうなるもの? いや、立場の指摘をしたいわけではないのです。立場がこうして変わっていく事を視覚的に、自覚的に、はっきりと体認できる場所、機会と言うのは実はそんなに無いものです。この時抱く感覚は大変貴重なものです。過去を眼で見られる機会においては、自分というものを暫時客体化させて捉えることができ、時の存在をはっきりと認識することができるものです。これは幻想文学が表現する一つのテーマにもなり得ているほど特別なものなのです。
 そして勿論、この場に居る人たちは創作の志を持っている人たちです。現在の境遇を超えて繋がる連帯感!
 卒業して私はだいぶ色々な職場を転々としてきました。(仕事で関係した人たちの中では)信頼できる友人などもごくごく少しだけできましたし、ある事柄において繋がりを持った知り合いもできました。しかし、殆どは仕事でのみ繋がりを持つだけでそれ以外の誰というわけでもない人たちですし、創作において繋がる人というのはただの一人も居ません。
 この日集まった人たちの多くは、1年に1度(この日)か2度くらいしか会う機会がありません。そんな間柄でもありながら、充分にくつろいで居られる空間。そう、彼らとはお互い、すべてをさらけ出していたわけではなかったけれども、少なくともお互いの地をよく知っている。物事に対して「正しく好み、正しく嫌うこと」、こうした趣味判断の原則を偽らず相手に伝えることができる間柄だからこそ、強い信頼を寄せることができたのです。
 本心を言えば、私は彼らと組んで、事業などを一緒に行いたいとも思っています。まあ、彼らだけというわけでなく、ネットで知り合った人たちなども含めて構想しているのですが。事業というのは創作性が大いに絡んだ仕事です。実際、そういう話は都度出てくるのですが、みんな起業するにあたっては「社長やだもん」とか(私も同じです。社長業と経理業をやる人は創作の時間は取れません)、やっぱり現実的に物事を考えると、いまの仕事を辞めるわけにもいかなかったりと、「いつかね、いつか」といった夢物語を語るだけで数年過ぎています。続く何年もこのまま他力に期待しつつ夢を語るだけになるのか、それとも動きがでてくるのか。それは結果によって明らかになるでしょう。
 一つここで言える事は、私はそのうち、そんな遠くない未来、創作を仕事にすべく現状に「一突き」していく決意で居ることです。青写真はほぼ描いてあります。これから身に付けないといけないのは技術、必要なものは時間、すでに準備ができたものは自分のしばらくの間の生活費、今はどうしても準備できないものは人を雇うようなお金。しかしそのうち、仲間は必要になります。
 いまの仕事を捨ててまで何かに挑戦するなんて、そんなのはお金に余裕が出来て、かつ技術やコネもたくさん出来てくるもっと将来の方がいいのでは、という指摘もあります。しかし、「やりたい事というのは、やれる時にやっておかないと、できなくなる時がきちゃうもんだよ」と多くの先人が語っている所でもあります。
 サークルの話からだいぶ変わってしまいましたが、ま、そんなトコで。