祝杯と別れ酒/大相撲九州場所13日目

 結びの一番であり今場所の大一番、朝青龍-琴欧州戦。立会いすぐに琴欧州左上手をがっちり掴み、2回引きつけて寄り倒し、とうとう11連勝の無敵の横綱に正面から土を付けました。朝青龍琴欧州の左の廻しを掴んでいたものの、琴欧州万全の体勢。土俵際の逆転の隙も最後まで与えませんでした。これで琴欧州は10番勝ち、12-13-10で3場所合計35勝。大関のノルマは直前33勝が目安であり、このラインはとっくにクリアしていたのですが、大関取りの場所は二桁という暗黙の要求があるようだったので、その要求も突破し、しかも横綱を倒したわけですからもう大関昇進は確定的でしょう。かくして大関陣は魁皇-大海-栃東-琴欧州と、久々に新鋭が加わり4大関体制に。初のヨーロッパ出身大関おめでとうございます。まああと2日でさらに1番以上勝っておけばさらなる「強い大関の誕生」として沸くんじゃないでしょうか。
 先場所の直接対決は朝青龍の強さの方が目立っていましたが、今日の相撲の琴欧州の力強さ。格下への取りこぼしが無くなれば横綱すら狙える器だな、と思わされました。まあ朝青龍が健在である限りは2場所連続優勝とかはかなり厳しい壁ですが、横綱が待望されている現在では、どちらか片方が準優勝であったとしても昇進させる可能性もありえますしね。まあいずれにしても外国人力士の伸長ばかりが目立ちますが、これは時代の流れですかね。私自身はこういう国際化の流れは歓迎していますし。(人気回復のためには日本人横綱が求められているのは間違いないのですが…)

 さて、こういう目出度い日ではありましたが、悲しい出来事も。本日で関取最年長の37歳・琴ノ若が負け越して、13日目での引退となってしまいました。別に十両陥落決定したからというのではなくて、部屋の親方がこの日で定年退職であり、親方不在が許されないために跡取りである琴ノ若が引退を余儀なくされたという流れなのでした。怪我で靭帯が1本しかないとはいえ、まだ2年くらいは土俵を勤められる鉄人ぶりを発揮できると思っただけに残念です。二枚鑑礼(親方兼力士)という特例での延命はできませんでしたか……。
 37歳の最長老が土俵を去ると、現在十両以上での年長組といえば、
34歳→皇司十両11)
33歳→北桜十両2) 玉春日十両2) 土佐ノ海(前11) 魁皇大関
 こんなところですか。36,35歳は誰もいないんですねぇ……それだけ琴ノ若が一人飛びぬけて年長のまま、しかも幕内でずっと相撲を取っていたと言うわけで。長らくお疲れ様でした。そしてこの最後の一番に当たった相手である石出改め駿傑は、(こんな重要な一番にも関わらず)変化で勝った事は汚点として残ることでしょう。

 変化といえば今日、千代大海-魁皇戦。魁皇に15連敗を喫していた大海は変化で魁皇に勝ちました。まあ正面からの突き押しで魁皇に勝てる見込みは殆どないわけですが、大海は意識して魁皇相手には変化をしてこなかったからこその15連敗だったのですよ。魁皇のひとつの弱点として、踏み込んできた時に変化あるいは変化気味に当たると体勢を立て直せず崩れると言う脆さがあり、この日はとうとうこれを利用してしまいました。大関戦での変化は情けないとは言えますが、大海に優勝の可能性が残っている以上、何が何でも勝ちたかったという事ですかね。魁皇にしてみれば「大海関は今まで変化でこなかったんだがなぁ…」と想定すらしていなかったんじゃないですかね。力の差として魁皇>>大海だと思っている私にとっては悔しいと言えば悔しいですが、まあ今場所の魁皇は鬼門の琴光喜に圧勝したし、たまにはこれくらいはね。できればあと2日のうちどっちか勝って二桁10勝にはしてもらいたいですが、その相手といえば朝青龍琴欧州。うーん残り2日も見逃せませんっ。