五月場所終了(1)

 大相撲五月場所は、新大関白鵬が14-1で雅山との優勝決定戦を制し、初の賜杯を抱きました。本割で負けた1敗は雅山によるものだったわけですが、この取組は白鵬攻勢だったものの焦って突き落とされた感じで、横綱の居なかった今場所はまさに敵無しといった場所でした。中盤あたりは頬が腫れて発熱し点滴を打っていたという状況もあったのにいやはや強い。やや受け身がちにとる癖もあるものの危なげなく勝ちこむあたりは、貴乃花をいやがおうにも想起させられます。
 いきなり来場所は綱とり。期待されるのは13勝以上の優勝になると思います。しかしもちろん来場所は朝青龍も戻ってくるでしょうし、そこまで簡単に行くかどうか。ただ、大関前後からすでに(親方連にすら)横綱相撲云々言われてる力士なんてそうそういないわけですよ。白鵬以外ではせいぜい好調時の魁皇が圧勝したときくらい。内外が認める別格なわけで、来場所には大きな期待が掛かる事でしょう。まあ、大関の貫禄を広めるために、少しくらい大関で足踏みしてもらっても良いんですが(^^;
 そういえば白鵬の着けている相撲衣(呼び名知らず。浴衣みたいなやつね。慣例的に尊敬する関取の名前が書かれる)には、旭鷲山の名前が描かれているんですね。日本で入門できるようになった恩人が宮城野の親方であり旭鷲山だったわけで当然なのかもしれませんが、この日の決定戦前後にも控え室には旭鷲山が付きっきりとなっており、番付を越えた恩の絆のようなものを感じさせてくれました。朝青龍はそういったものを感じる事は殆どないんですよね。それだけ一人でやってきたという事なのでしょうけれど。

 で、同じく14-1で惜しくも決定戦に敗れて優勝同点(準優勝)となった雅山。今までの幕内最高成績は12勝でしたがこれを大きく更新。14勝というのはこの世界においては、「12、13勝とは格が違う」と高く評価されます。来場所は10勝すればおそらく返り咲きとなるでしょう。
 ちなみにこの雅山、過去は12-11-11で大関に昇進した途端、6-8-9-8-7-9-7-3勝(ノ∀`)と、人が変わったように弱くなってしまい歴代再弱クラスの大関と言われました。右肩インピンジメント症候群とやらで力が出せなかったためだとか。まあそれでイメージダウンしていたわけですが、幕内に上がる前は4場所連続優勝し「平成の新怪物」という綽名も付いたことがあります。今は死語になってしまった感がありますが。前回大関に上がる際の相撲も、取り立ててうまいとも思えないのに相手は押せず崩せず、そのうち突き押されてしまうという、風林火山の山のような力士だったのですね。まあ組まれてしまうとそうでは無かったですし、ある水準を越えた力士には殆ど勝てなかったわけですが(例:貴乃花)。
 いまの雅山は、怪我や持病が快復してはいないそうなのですが、前回の大関昇進前の重い腰が復活しており(というかますます重くなっている)、かつ相撲勘を身につけたわけです。ここ数場所も毎回のように大関を薙ぎ払っており、今場所のブレイクの予感は多少はありました。14勝はさすがに考えもしませんでしたが。この好調を持続すれば、大関復帰はそう難しくないことでしょう。まあぼちぼち琴欧州あたりも怪我から復活してきそうですが…。
 決定戦での相撲は、雅山の立ち合いの突きが滑ってしまいすぐに四つになってしまいました。白鵬相手に四つになってしまって勝つのはやっぱり無理でした。「大関の汗で滑った。でも仕方ない」とのコメント。疑惑というわけではないのですが、そういえば白鵬は花道に向かう前になぜか一度風呂場に入っていったそうで、雅山の狙いを読んで濡らしてきたんじゃないかとか一部では言われていますね。実際よく分かりませんが、それは関係ないにしても、立ち合い前のタオルで胸拭いてもらいたかったですね。
 なにはともあれ両者ともに14勝は立派な成績です。横綱栃東の休場したこの場所をよく盛り上げてくれました。

 ここ2年、朝青龍時代と言ってもいい寡占状態でしたが、もうはっきりと、そのバランスが揺らぎ始めてると言って良いようです。そうはいっても体調万全な朝青龍ならあっさりとまた15戦全勝とかやってくれそうなものですが。来場所が楽しみですね。