斎藤メモリアル - 第88回高校野球選手権大会総括(2)
そして夏になり。西東京地方大会の決勝で、日大三との激闘を制し、甲子園出場が決まったとの報を耳にしました(http://kozo.boxerblog.com/kozo/2006/07/30vs_b796.html)。まあこの段階では絶賛応援! というわけでもなく、気に留めるべき投手の一人という程度であったわけですが、ともあれ春のセンバツの酷使を乗り越え、再び甲子園にやってきたということを少し嬉しく感じたものです。ただ、最初からこのチームは斎藤以外投げるべき投手がいないということを知っていたわけで(http://d.hatena.ne.jp/gumina/20060806)、優勝云々はさすがに私も露ほども考えていませんでした。なにせ、最初の3戦を戦うブロックがこんな感じだったわけですよ。
何やら凄いスラッガーと騒がれている中田を擁した大阪桐蔭、春に優勝した横浜、準優勝した清峰がひしめき合っていたわけで。
1戦目の勝利は予想していた通りでした(http://d.hatena.ne.jp/gumina/20060807)。ただ、多少なりコントロールが安定しておらず都大会の疲れが残っているのかなと少し心配したものでした。しかしどうやらこれは初戦ということでの独特の緊張とか、あとは意図して手を抜いていたためだったようですね。要するに杞憂だったわけです。
春の優勝校横浜を下した桐蔭との対決。世間の前評判は「中田翔中心の爆発力のある桐蔭に対する、そこそこ好投手の斎藤」という感じだったのですが蓋を開けてみれば、斎藤の前に桐蔭打線はキリキリ舞い。大会を騒がすであろうと注目を集めた中田翔を速球で完璧に力勝ちし、優勝候補に圧勝したことで、メディアからの気を引くと共に、私の斎藤評も一気にグレードアップしました(http://d.hatena.ne.jp/gumina/20060812)。格が違うなんて書くと若干相手側に失礼なものがあるのですが、違うものは違うんです。こんなことを感じる投手というのはそうはいないのですから。そしてその私の直感は正しかったのが最終的に証明されたわけです。ま、ともあれ、センバツの時より明らかに成長した斎藤佑樹&早実に対してこれはイケる、と思いました。懸念点といえば斎藤のスタミナだけだったわけです。
3回戦の相手は清峰だとばかり思っていたら、なんと進出してきたのは福井商。これは有利だと感じました(http://d.hatena.ne.jp/gumina/20060813)。なぜかというと、良い投手は好投する限りそうは打ち込まれないから。逆もしかりで相手側に良い投手がいるチームは厄介なわけです。そういう意味で福井商のほうが与しやすい相手だった。
結果として、10本のヒットは浴びたものの単打が多く、斎藤くんは9回自責0。要所を締める力を持っていることを確認したと同時に、ちょっと被安打が多いことに少しずつ不安は感じてきました。そろそろ疲労が蓄積がしてきたんじゃないかと。
ベスト8の相手としては比較的恵まれた部類。しかも相手のエースは前回200球を投げており、斎藤君の疲労度次第で勝敗が決まるだろうと思っていたわけですが(http://d.hatena.ne.jp/gumina/20060816)、球はバラつくもここまでの疲れをあまり感じさせない投球。但し試合は終盤まで負けていました。日大山形は疲れているエース阿部を出すしかないだろうと思っていたら遊撃手の青木優が先発し、しかもこれがすごくいい投球をし、早実打線を封じ込める意外な状況。かなりヤバいと思っていたのですが、この青木がショートからピッチャーに代わったためにショートに代役を置く必要が出てきてしまい、この代役ショートの子が8回にミスをしたことから大逆転されてしまったわけです。5点も取れば、斎藤君が負けるはずも無く終了し、早実はベスト4に進出となったわけです。
ベスト4までは私もかなり期待はしていました。しかし問題は、この日含めて残りの準決勝、決勝と休みのない3連戦ということ。斎藤はどうやら春にスタミナ切れで負けた事で、スタミナの強化に取り組んでいたようで、それが今までの結果に繋がってはいるも、5戦目という未知のゾーンに入って果たしてどうなのか。
しかし……そんな不安を吹っ飛ばす結果に。
確かにベスト4の相手としては一番恵まれた相手とはいえ、ベスト4に上がる相手が弱いはずがない。そんな相手に対して3安打無四球完封と、ぐうの音も出ないほどに完璧に料理。ダークホースであった鹿児島工業の支柱である今吉晃一との対決はインハイを使い完勝。
これほどの結果は私も想定外だったので目を丸くしました。要するにスタミナにまだ余力が残っているわけです。基本的に1人だけでずっと投げているはずなのにどこからそのスタミナが来るのだろうか。これは単なる体力の問題ではなく、「手を抜くべきところで抜いて腕の負担を減らす」という投球が出来ていたためでした。
「3連覇の苫小牧を倒せるチームは早実しかないと思っているんで……」と斎藤くん。明日も投げる気満々でした。なるほど余力は残している、しかし3連投。その相手である公式戦4x連勝中の王者駒大苫小牧、ここのエース田中将大は2連投だし2回戦からの組み合わせだったりと疲労度が違うわけです。早実の打撃陣は少しずつ湿りがちで、逆に田中投手は上向き。正直早実打線が決勝戦で簡単に点が取れるとは思えず、従って斎藤が力尽きるか、そうでなければ息詰まる投手戦にしかならないだろう、という見通しでした。
3連投となった斎藤。しかし力尽きることなく猛打の苫小牧打線を抑えていきます。7回まで被安打1に抑えるとか、連投している投手の業とは思えません。もうひとつの予想となった投手戦として進行していったわけですが、まさか15回決着付かず再試合になるとは!
さすがに翌日の再試合は斎藤も疲れが出てしまうだろう、一方の田中は余力を若干残しており、しかも投手に余裕があるので先発は他の投手(菊池)から出してくるだろうと私も思いました。「もうどちらが勝っても負けても両者ともに良いチームで、斎藤も田中も良いピッチャーだった」と私はまったり結果を眺めるつもりで構えかけたのですが、「明日は今日できなかった完封をしたいと思います」と強気の斎藤の談話。すごい精神力を持っているなと感じたわけですが、明日は4連投になり、既に球数も830を数えている。好投などした日には、それはもう怪物じみたスタミナと言うしかない。
で、今日のこの結果になったわけですが……
えーと、形容、形容。あれですよ、幻瞑なんとやらで十ツ身に分身して攻撃してきた卍丸を迎え撃ったJのFPMP(フラッシュ・ピストン・マッハ・パンチ)のシーン。「魁・男塾」ね。1発目を打って腕の筋肉が伸びきってしまい「凄いパンチだったがギリギリ生き残った。お前はもうFPMPを打った以上攻撃できまい。わしの最後の力でお前を倒す…」と息絶え絶えの卍丸に対して、平然と2発目のFPMPを打つJ。このシーンを斎藤の中に見ることができました。
明らかに疲れは出ているものの、コントロールと組み立てで的を絞らせない。これは斎藤だけでなく田中にしてもそうで、互角の戦いだったわけですが、菊池が最初1点失点してしまった分が勝敗を分けてしまったか。