一夜明けて - 第88回高校野球選手権大会総括(4)

 容易に予想はできましたが、今日のスポーツ紙は斎藤佑樹一色でした。で、この斎藤くん、進学が規定路線だったようなのですが、さすがにこの結果を受けてプロのスカウトたちが色気を出し始めたようで、それに呼応するように、「進路? 決めていません」と、プロ入りの可能性も若干匂わせたとか。
(追記:でも、当初予定通りひとまず進学路線のようです。それでいいんじゃないかな)

 それはともかく、早実と苫小牧についての総評。

早稲田実業(優勝)
 監督自ら「斎藤のチーム」と言い続けた。実際斎藤がいなかったら甲子園はおろか予選敗退レベル。勿論これは斎藤一人に頼るチームと表現したわけではなく(斎藤が崩れたらそこまで、という意味は微妙に含んでいるものと思われるが)、斎藤が抑えてくれるから、打撃力こそ物足りないが、だからこそ多くないチャンスを物にし、足をひっぱらないよう守備力を強化してきた、ということ。実際その通りの野球が出来たと思う。本当に良いチーム。斎藤がいなくなる来年から暗黒ロードが予想されるが、他の選手たちも自信をつけ、今後も甲子園出場目指して頑張ってもらいたいと思う。
 捕手の白川は斎藤をよくリードしたと思う。ワンバウンドのスライダーを後逸することなく受け止め続けた彼は間違いなく影の立役者だろう。

駒大苫小牧(準優勝)
 2連覇、そして今年も決勝まで登りつめた。苦戦した試合も多かったが結果が全てだろう、やはりすごく強いチーム。やや田中将頼みなところがあったが、ある程度の投手がまた育てば、来年もまた勝ちこめることが容易に想像できる。
 苫小牧の3連覇はなぜ失敗したか。一つは斎藤が相手であったこと。もう一つはやはり、不祥事による春の参加辞退、これがあったろうと思う。しかし3月に責任を取って辞職して5月にさっさと復帰する監督ってどうなのよとか正直思った。まあ、香田監督なしにはいまの苫小牧は考えられないのは確かなのだが…
 エースの田中将大はやはり文句なく凄い投手だった。2回戦3回戦と精彩を欠いた投球を見たときは眉を潜めたものだったが、決勝に近づくにつれ徐々に調子を上げてきた。そして決勝で見せた斎藤との互角に近い投げ合い。大会を通してみれば不調と言えるなか、最も肝心な試合でその強さを見せたというか、斎藤がその100%の力を見せていた中、田中は80%の力しか出せていなかった、そう思う。田中の公式戦通算成績は48試合で32勝2敗、防御率1.46。主役は斎藤に譲ったが、今年の最上位の選手の一人であることは間違いない。田中はプロ志望であり、ドラフト1位候補は既に確定事項。

 あとは(斎藤&田中を除いた)注目&準注目クラスだった選手について簡単に感想を。(http://d.hatena.ne.jp/gumina/20060806 で述べてたところが中心ね)

中田翔(桐蔭)
 大型スラッガーとして今大会の目玉になる可能性のあった彼は、結果的に斎藤佑樹の引立役となった。しかしその体躯にスイングスピードは別格。桐蔭が来年甲子園に出てこれるかは激戦の区ゆえ分からないところだが、ぜひ出場して話題をさらうほど活躍してもらいたい。
 ちなみに投手でもあるらしいが今大会は体を痛めており投げれなかったようだ。というか、投手としての潜在能力がどうも物凄いらしい。
●謝敷(桐蔭)
 大会が始まるまでは全然名前を認知していなかったが走好守揃った良い選手。進学予定ということで大学野球で活躍するものと思われる。
●川角(横浜)
 一応スカウト的には評価はされているも、甲子園初戦敗退ということで評価ダウンに。相手が桐蔭というのが不運だったとはいえ、一応注目されていた投手としては並の下の働きしかできなかった。プロに入ることになるとしても、一軍で活躍するにはある程度時間を必要とするだろう。
●本間(苫小牧)
 田中が投手に専念するということで代わりにキャプテンとなった四番。打撃の中心として今大会をひっぱるも、斎藤との対決の場においては中田同様、彼の引き立て役になってしまった。その扇風機ぶりに、駒大が早実に負けた戦犯と一部では囁かれているが、斎藤が今大会本気を見せた打者は4人しかいなかったように思える。それは桐蔭の中田(全打席)、鹿児島の今吉晃一(代打の1打席のみ)、苫小牧の田中(局面に応じて)とこの本間(全打席)である。140キロ後半の明らかに全力の球を投げられては容易に打てるものじゃないわけで、仕方が無いといえば仕方が無い。
 一応プロ志望らしいがスカウト達の評価はどうなのだろうか…。
●鮫島(鹿工)
 ノーマークであった鹿児島工業をベスト4に勝ち上がらせた立役者の一人。キャッチャーとして今大会1,2を争う良い選手。
●有迫(清峰
 初戦は無難に勝ちあがったとはいえ、二戦目でいいところ全く無く敗れる。川角同様、期待されながら大会の影に隠れてしまった。
●ダース(関西)
 球速は凄かった。ついでに言うとプロ志望。素材でいえばダルビッシュ級に化ける可能性が若干あるが、コントロールの劣悪さがあり厳しい所。今大会は見事な炎上劇を演じ、評価はさらにダウン。
●大嶺(八重山
 期待して見ていたのだが、球そのものにはかなりのキレがあるものの制球がとにかく悪く期待外れだった。プロ志望だし、獲得したいと思っている球団も既にいるわけだが、かなり荒削りな素材であり、うまく磨けるかどうかに掛かっている。
●金城(八重山
 大嶺がエースということで普段は野手だが一応投手もできる。とか言ってたら大嶺不調でメインで投げることになってしまったわけだが、制球、打力ともに一級品の質を見せ付ける。今大会で大嶺と評価は逆転。こちらもプロ志望。投手、野手どちらにも将来性を伺える。
●堂上(名電)
 あまりよく見てなかったので評価はパス。甲子園では活躍することはできなかったものの、ドラフト1位枠にかかる選手。